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共鳴の涙
万雷の拍手に送られながら、共鳴をテーマに躍動したU-17日本代表“94ジャパン"は
メキシコをあとにした。 王国プラジルとの準々決勝。涼しい気候に劣悪なピッチというこれまでとは真逆の環境で
戦いに臨んだ日本は、彼我の差を思い知らされることになった。
それまでの戦いで見せた槻能美にあふれたサッカーは影を潜め、ブラジルにクオリティーの差を
見せ付けられた。ただ、それだけでは終わらなかった。終盤に見せた決死の反攻。「あのまま終わる」のとでは心理的に残るモノがまるで達う。
価値ある反攻だった。 1994年生まれ以降の選手が選考対象だった今回のU・17代表。吉武博文監督はチームについて「選ばれなかった選手まで含めで94ジャパン"」
といった話を以前にしていたことがあるが、年代別代表が世界大会に出て行く意味の一つに
“世代としての共感性"がある。
当然ながら、選ばれた選手たちはこの世代の選手たちの僚友であり、敵手である。対戦した経験、練習した経験があって、力は見えている。そんな彼らが世界と戦うのを観る。「早川があれだけやれるなら俺だって…」と
思う選手もいるだろうし、「喜田があれだけやられる」とか
「ブラジルはどんだけすげ一んだ」と思う選手がいてもいい。もちろん所属チームに戻った代表選手たちによる“還元"もある。世界大会のピッチに立った選手だけが“経験"するわけではない。世界での手ごたえも涙もシェアされていく。大会の結果に一喜一憂するのはナンセンスだが、大きな意味での“94ジャパン"が
この大会で積み上げたものが決して小さなものでないのも確かだ。 言うまでもなく、今回選ばれた選手たちで大成できるのは一握り。そ
しで選ばれなかった選手の反攻"は必ず起きる。その健全な競争が“94ジャパン"と、その周縁の世代をさらに強化していくだろう。それこそが真の“共鳴"だ。 次のU-20で、リオ五輪で、そしてW杯で、彼らが共鳴の真価を見せてくれることを信じている。